ガードモア修道院に潜む狂気 第6章 フェイの森
ガードモア修道院に潜む狂気 第六章 フェイの森 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 8月 20
1:エトナが眼を細め、辺りの様子を伺う、森の中には流れる水の音、葉どうしがこすれる音、獣の息づかい、様々な音に溢れていた。日差しはまだ低く、爽やかな風が頬をなでた。 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 8月 21
2:ヨルゴを揺すぶり、ハイジの口を手で押さえながら叩いて起こす。じっとりとした土から二人は身を起こすとヨルゴは辺りを伺い、ハイジはしばらくエトナの顔をぼんやり眺めていた。 #ガードモア修道院
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3:「おはようございます」ハイジが要領を掴んでなさそうな声で言う。 #ガードモア修道院
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4:「もう大丈夫ですか将軍」ヨルゴが心配そうにエトナに声をかけた。エトナは腕を振って見せた。ギリリと革帯が引き絞られ、金属の鎧がこすれる音がする。「それだけ動けるなら」ヨルゴが言った。「大丈夫だ。」 #ガードモア修道院
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5:エトナとヨルゴ、ハイジは森の中で夜を過ごしたのだった。硬い携帯食を口にしながらこの先のことについて三人は話し始めた。 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 3
6:「もう少し森の奥へ進んでみよう。蜘蛛ばかりとは限らないさ、なぁ?」とエトナが言うとヨルゴは苦笑いしたが、反対はしなかった。反対する理由は見当たらなかったし、いずれにしてもこの人数で秘術師の塔の攻略は不可能に思えた。 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 3
7:荷物を担ぎなおすと、ヨルゴを先頭に森を奥へと進む。梢は空をすっかり覆い隠し、地面にはほとんど木漏れ日はなかった。奥へ進むほどに緑は深まり、自然の領域を主張した。 #ガードモア修道院
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8:しばらく歩くと急に開けた場所に出た。自然だけではなく、人工物の名残も見える。朽ち果て崩れ落ちていたが石造りの建物の跡があり、その近くには光を反射しきらめく泉があるのが見えた。 #ガードモア修道院
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9:「これは、ありがたい授かり物だな」バハムートへの感謝を口にしながらエトナは泉へと歩いて行った。ヨルゴとハイジもそれに続く。エトナが水袋の口を開け、泉へ手をのばしたその時、鋭い声が三人へ向けられた。「動くな!」 #ガードモア修道院
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10:声の主を探そうとエトナが身を起こした時には既に取り囲まれていた。細い身に革の鎧、全員がロングソードを帯びていた。細く鋭い目には瞳が無く、神秘的な輝きの眼が彼らに向けられていた。エラドリンである。 #ガードモア修道院
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11:エラドリンは森と自然の世界、フェイワイルドという別次元に住む種族である。エルフの祖先と言われている。普段はフェイワイルドにいるが、最近はこの世界で見かけることも珍しくなくなってきていた。エラドリンの一人が進み出て話し始めた。「ここで何をしている?」 #DnDj
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12:他のエラドリンはロングソードを三人に突き付けていた。エトナは動じる様子も見せずエラドリンたちに剣を収めるよう制すると「随分とご挨拶じゃないか、私はエトナ、しがない冒険者だ、名前くらいは名乗ってもいいじゃないかね」と進み出たエラドリンに言った #ガードモア修道院
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13:「私は、夏の女王の領地預りベルファレン家の長子にして後継者べリアン、訳あってこの地で探しものをしている」べリアンは剣を鞘に収めると名乗った。「ふーん、ねぇ、アナタがエラドリンなの?」ハイジはべリアンの前に来ると言った。 #ガードモア修道院
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14:しげしげと顔を眺め、全身を見回すとハイジは更に言った。「エラドリンはみんな魔法使いだって言うけどアナタは違うみたいね。そんな重い棒っきれを振り回してたんじゃ、アナタが1つ呪文を唱える間に私はみっつ唱え終わるわ」ハイジは得意そうに言った。 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 3
15:「いや、」べリアンが口を開くとハイジが更に言う。「でもあなたみたいなエラドリンは初めてよ、棒っきれで魔法を使おうなんてやるじゃない!まるっきり好みじゃないけど根性は認めるわ!」べリアンは苦笑して「拙者もそなたみたいなティーフリングは初めてだよ」と言った #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 3
16:べリアンが剣を収めたのを見て他のエラドリンたちも剣を鞘に収めた。張り詰めていた緊張も緩み、エトナは再びそよ風を頬に感じていた。「探しものをしているのだ」べリアンが言った。「昔、出ていき、そして戻らぬ父の事を」噛みしめるように言う。 #ガードモア修道院
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17:ヨルゴはあまり興味がないようだったが黙って聞いていた。ハイジは珍しく聞いているように見える。「家を捨てた父だが私には父の考えがあるのではないかと」誰かに言い聞かせるようだ。「足跡を追い辿り着いたのがこの朽ちた街だ」べリアンはぐるりと周りの森を見回す #ガードモア修道院
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18:「ここには何かあるよ」ヨルゴが慰めるようにべリアンに話しかけた。「だから見つかるよ」べリアンはヨルゴを少しの間、黙って見ていたが、「かたじけない」と頭を軽く下げた。ヨルゴは少し笑うと泉の周りをゆっくり歩き始めた。 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 3
19:「まーなんとかなるよ、きのーもエトナがしにかけたけどなんとかなったし」ハイジも言う。エトナは苦笑するしかない。べリアンは変わり者のティーフリングを見て微笑んだ。「そうだな」 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 4
20:「そうだ、まだ探索を続けるのであれば頼まれてくれぬか」べリアンが切り出した。エトナは少し悩んだがこのエラドリンの頼みをはねつける理由も見当たらなかった。「伺おう」「かたじけない。実は私の妹も一緒に来たのだが、つい先刻より見えなくなってな」 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 4
21:「分かった。探してみよう」エトナが頷いて応える。「名はアナラストラだ、一応戦士としての訓練は受けたがまだな……」「女が勇ましいのはどの種族も同じだな」ハイジを見ながら答えた。ハイジは気にしていない。「私の方が強いよ」その自信はどこから来るのか。 #ガードモア修道院
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22:「ヨルゴ、ハイジ、話は終わった。行くぞ」ヨルゴが戻ってくる。ハイジは荷物が無いので身軽なものだった。歩き始めた一行にべリアンが声をかける。「ここより西へ行くと鐘楼があった。南には見張り塔だ。しかし塔には入り口が無い。塔には行くまい」「分かった」 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 4
23:再び森の中へと足を踏み入れる。相変わらず鬱蒼としていた。日は高くなり、明るさが森の中に感じられるようになってきていた。「何か建物がある」ヨルゴが目を細め、二人に告げた。「隠れるところがあるならエラドリンがいるかもしれないね」エトナがヨルゴに言う。 #ガードモア修道院
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24:木々が再び開けた広場の片隅にその小屋は立っていた。異質なのは小屋の屋根を破って大木がその梢を伸ばしているところである。「よっぽど木が好きなんだな」ヨルゴがエトナに言った。「もう人がいないのだろ、修道院が落ちたのは100年前だぞ」「そうか」ヨルゴは頷く #ガードモア修道院
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25:三人が小屋へと歩き始め、そしてすぐに異変に気付いた。壁の割れ目からはくちばしを持った動物がこちらを伺っている。ヨルゴが背中の斧に恐る恐る手を伸ばすと、ゴウと動物が吠えた。巨体が小屋のドアを押し破って姿を表す。毛むくじゃらの巨体にフクロウの顔、長い爪 #ガードモア修道院
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26:「アウルベアだ」エトナが斧を抜きながら言う。「これヤバいの?」目を白黒させながらヨルゴが尋ねる。 #ガードモア修道院
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27:「ねー、あれってお父さんがフクロウなのかな、お母さんがフクロウなのかな」ハイジはアウルベアの両親の心配を始めた。 #ガードモア修道院
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28:扉を押し破ったアウルベアの後ろにはもう一体、アウルベアが見えた。「ああ、お父さんとお母さんだ」違う。 #ガードモア修道院
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29:「やっぱヤバいよね?」ヨルゴが飛びかかってきたアウルベアの爪を避けながら言う。地面に転がりながら戦斧を抜き、その勢いでアウルベアの胸に打ち付ける。「そのようだな!」エトナは盾を前にしてジリジリとアウルベアに近寄った。 #ガードモア修道院
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30:「ガアッ」後ろのアウルベアが吠えて立ち上がった直後のヨルゴに爪を振った。ヨルゴは避けきれず、アウルベアに抱え込まれる。「やめて!おいしくないよ!」ヨルゴの肩口にアウルベアのくちばしが刺さる。 #ガードモア修道院
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31:「ヨルゴ!」エトナが叫び、アウルベアに体当たりする。ヨルゴを掴んでいたアウルベアはよろめき、ヨルゴはするりと掴みを抜け出した。「大丈夫か」アウルベアを押えながらエトナが訊く。「無理無理無理無理ダメよ全然ダメよ」ヨルゴが立ち上がり斧を構えながら答えた。 #ガードモア修道院
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32:「魔法のキラキラよ!フクロウのクマを焼いてね!ブシュー!」今日もハイジは元気です。 #ガードモア修道院
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32:「ヨルゴ、撃て!」エトナが叫び、ヨルゴは斧を振るった。戦斧はアウルベアのひじにブチ当たり、刃が肉に食い込む。「らアッ!」ヨルゴが気を吐き、力を加えると、アウルベアの腕がドサリと地に落ちる。 #ガードモア修道院
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33:「ギューッ」アウルベアは鳴き声を上げ、後ろに後ずさった。「逃げんな!」ヨルゴはジャンプしてエトナの前に出ると再び戦斧を振り下ろし、左の腕を落した。よろけるアウルベアの隙を逃すヨルゴでは無かった。左手で腰の斧を抜き、即座に首に叩き込んでいた。 #ガードモア修道院
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34:残るアウルベアは逃げるハイジを追いかけていたが、一体が殺されたのに気付くと走っていた巨躯をひねり、ヨルゴに向かってきた。「クソ無理!」ヨルゴが身体に力をかけ、ライカンスロープの血を呼び起こす。髪の毛が伸び、体毛も逆立つ。襲いかかる爪を戦斧に受けた。 #ガードモア修道院
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35:「エッセンプリズム!!」アウルベアをハイジの魔法の奔流が襲う。アウルベアが悲鳴を上げる。「クソ!フンッ!」ヨルゴは戦斧を引いて身体を捻ると、ぐるりと腕を回してアウルベアを払った。戦斧ともう一つの斧が腕と胴を切り裂き、アウルベアはどうと地に伏した。 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 4
36:「とんだ場所だなここ」ヨルゴが毒づく「なんで今まで放置してたんだよ」「分かってたことじゃないか」エトナがヨルゴに鼓舞の言葉を言い、傷を癒やす。ハイジはアウルベアの死体を突いている。「これ売れない?」エトナにハイジは尋ねたがエトナは首を振って答えた。。 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 4
37:小屋を改め、荷物を背負いなおすと、エトナは二人に言う。「さあ、ここがゴールじゃないんだ、先に行くよ」 三人は再び森の中へと入っていった。 #ガードモア修道院
— 妄想殿下 (@den_k) 2013, 9月 4
ガードモア修道院に潜む狂気 第六章 フェイの森 了 #ガードモア修道院
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